14 片山正通 (インテリアデザイナー)

片山正通

インテリアデザイナーとして世界で活躍し、今や仕事の9割が海外という片山正通さん。お会いした日はシンガポールからの帰国翌日。午前中の取材はキツかろうと思いきや、会議をすでにひとつ終えての登場で、最近、ライフスタイルを夜型から朝型に移行中でもあるのだとか。取材後半には六本木を「朝の街」にする案も! 現在、武蔵野美術大学、空間演出デザイン学科の教授でもあり、撮影は、〈東京ミッドタウン〉デザインハブで行われている「ムサビのデザイン」展にて。

update_2012.10.17 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

恐ろしくパワフルだった六本木。

映画「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」 Copyright (C) Toho Co.,Ltd. All Rights Reserved.

映画「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」
2007年の作品。800兆円の借金を抱え、破綻の危機に瀕した日本経済を救うべく、1990年の東京にタイムトラベルするコメディ映画。ロケ地に六本木交差点や旧六本木スクエアビルなどが登場する。

 僕が21歳で東京に来たときはバブルまっただなか。六本木は夜でも昼間みたいに明るく、通りに人が溢れているような状況でした。リオのカーニバルみたいでしたね。数年前に『バブルへGO』という映画がありましたが、本当にあのまま、1万円札をふってタクシーを止めている人もいた(笑)。僕らはお金もなかったし、何の恩恵にもあずかりませんでしたが、僕の中での六本木のイメージのデフォルトは、当時の「恐ろしくパワフルだった六本木」なんです。

 バブルが崩壊し、六本木離れがあり、その後〈六本木ヒルズ〉や〈東京ミッドタウン〉、〈国立新美術館〉ができたりして、六本木のイメージは享楽的な街から大人の街へ、僕の中でも変化しました。今は仕事で来る街。特に〈東京ミッドタウン〉にはインテリアデザインの仕事でお付き合いのある「ユニクロ」の東京本部があるので、週に1度はミーティングで来ます。ここ〈デザインハブ〉には武蔵野美術大学のデザイン・ラウンジもありますしね。

 ただ、六本木という街としての付き合いというよりも、ピンポイントで目的地に来て、目的を果たして帰る、という関わり方になっていて、そこが残念なところではあります。では、どうなったら、僕自身も六本木という「街」を楽しめるようになるか。僕だったらどうするか......

そぞろ歩きができる街。

 まずは「そぞろ歩きができる街」にしたいですね。六本木は外苑東通りや六本木通りといった大きな通りを車がバンバン走っているイメージが強いと思いますが、実は青山からでも歩ける。もっと徒歩目線で、街を活気づけるような小さな拠点、これから絶対面白くなりそうな若い子たちの小さなお店といった「小さな点」を周辺のエリアとの間に落としていくことで、車ではなく歩いて来たくなる街になったらいいな、と。

 そぞろ歩きができる通りみたいなものですね。お金がないんだけど面白いことをやっているような子たちを誘致して、「界隈」をつくりたい。大きな資本によって計画された区画に有名ブランドのお店を配置する、みたいなキッチリとしたものはもう既に六本木にあるので、もうちょっと有機的というか、いい加減な感じのもの。これから洋服屋さんとして頑張りたい、といったような子たちの店が3つ、4つあれば、あとはその「点」がつながって、「界隈」って自然にできてくると思うんです。

 あとは、立派すぎないテキトウなカフェが六本木にあるといいなあ。立派すぎると気後れしてしまうので「適当なものの良さ」が入ってくると、適当じゃないものも輝くんじゃないかな。

種が埋まれば、草木が生えるように街は変わっていく。

 計画性をもってつくりすぎると、どこの街も同じになっちゃうんですよね。最近はアジアでもヨーロッパでもアメリカでも、どこの国、どこの街に行っても同じ風景だなと感じることが多いんです。便利にはなったけど、果たしてこれでいいのか、とも思う。日本にしかない、六本木にしかない魅力を作ろうと思ったら、六本木で面白いことをやろうとしている日本の若い人たちに投資をしていかないと、わざわざ日本に来て、六本木にまで脚を運ぼうという気にはならない。

 僕はインテリアデザイナーで、自分の見える範囲、触れられる範囲から始めて大きなことに繋げていく、ということをやっているので、僕が街に対して何かするなら、将棋倒しみたいに近くから遠くへ、バタバタっと倒れていくみたいな派生のさせ方を選ぶと思う。先ほどの「小さな点」によって街が変わっていくというのは、場をつくる仕事をしている者としての実感でもあって、それって意外と早いですよ。種さえ埋まれば、草木が生えるように街は変わっていく。本来は街の成り立ちってそういうものでもありますよね。