12 佐藤可士和 (アートディレクター)

佐藤可士和

何度行っても発見のある街。

 僕は東京生まれの東京育ちなので、東京という都市には思い入れも愛着もあります。東京には六本木があって青山があって銀座、新宿があって......、それぞれの街ごとに顔が違う。それがとても面白いと思うんです。ちょっと離れると違う顔があるという街には、また行きたくなります。ニューヨークも表面的にはあんなに小さいのに、ダウンタウンとアップタウンでは全然雰囲気が違い、何回行っても発見があります。

 世界の都市の中でニューヨークが好きとか言ってしまうと、話しとしてはつまらないのですが(笑)、でもやっぱり面白いですよね。情報も豊富だし、どんどん変わる。東京もそうですが、1年後にまた行っても新しく見るものがあって、絶えず新しい何かが起きている。

都市におけるソフトの新陳代謝。

 デンマークのコペンハーゲンも好きな都市のひとつなのですが、毎年行こうとは思わないですね。古い建築とモダンな建築が融合している街全体は美しく、すごくセンスを感じます。どこに行っても光がとてもきれいですしね。でもそれは、1年後も変わらない、ある意味完結した魅力だと感じています。もちろんその不変の美しさが街の魅力であり、パリをはじめ多くのヨーロッパの街の美しさの本質でもあります。

 一方ニューヨークは、ミュージカルの演目やギャラリーの展示も変わり、本屋やカフェも刻々と入れ替わっている。ハードではなくソフトの話にはなりますが、行けば、未体験の何かが必ずある。僕にとってまた行きたいと思う街は、そういった新陳代謝のある街なのです。

デザインを世の中がよくなる力に。

瓦礫を活かす森の長城プロジェクト

瓦礫を活かす森の長城プロジェクト
2012年5月25日に発足。震災瓦礫を単なる「ゴミ」や「廃棄物」ではなく、その土地の方々の生活の形見、大切な思い出の品として捉え、有効な資源として活用するプロジェクト。

 デザインとは問題を解決する手段だと思っています。いろんな企業や業界と仕事をさせていただいていますが課題はそれぞれ違います。だからこそやりがいがりますし、結果が出れば嬉しい。今後は、ひとつの企業のためのデザインとは別に、もう少しパブリックな仕事にも力を注いで行きたいと思っています。デザインやクリエイティブの力を、少しでも世の中がよくなることのために使っていきたいし、社会にもっとダイレクトに関われるといいなと思っています。

 今、「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」の理事をしています。細川護熙先生と横浜国立大学の宮脇昭名誉教授が設立された財団法人で、被災地の沿岸部に、東日本大震災で出た瓦礫を活用して土台をつくり、そこに植樹して300〜400kmにわたる森の防波堤をつくるという壮大なプロジェクトです。僕は活動のアイコンとなるビジュアルやウェブなど、コミュニケーションの部分を主に担当していますが、より多くの人々に関心を持ってほしいと願いながら活動を続けています。

スポーツ選手はスポーツは素晴らしいという意識がきっとベースにありますよね。音楽家は音楽の力を信じているでしょうし、スポーツや音楽が素晴らしいということは、みんなの中にもある。それと同じように、僕はクリエイティブの力を信じていて、その力をできるだけ最大化したいと思っています。それがよりパブリックなことであったり、日本の優れたコンテンツをグローバルに発展させることの一端を担うことにつながっていれば、とても嬉しく思うのです。

取材を終えて......
コンテンポラリーアートを愛する佐藤さんが、その中心地であるニューヨークと現在の六本木を比較したりと、とても明確で実現したら楽しいアイデアを伺えました。様々なフィールドで活躍されている佐藤さんの話す、インパクト(つかみ)の重要性も考えさせられました。(edit_rhino)

佐藤可士和(さとう・かしわ)
1965年東京生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。株式会社博報堂を経て2000年独立。同年クリエイティブスタジオ「サムライ」設立。ブランドアーキテクトとして、ユニクロや楽天グループのグローバルブランド戦略、キリンラガービールのパッケージデザインとコミュニケーション戦略、セブン-イレブンジャパンのプライベートブランドリニューアルなど数々のプロジェクトを手掛けている。20万部超のベストセラー『佐藤可士和の超整理術』はじめ、『佐藤可士和のクリエイティブシンキング』絵本『しょうちゃんとちきゅうくん〜ずっといっしょにいたいね』ほか著書多数。毎日デザイン賞、東京ADC賞グランプリほか受賞多数。慶応義塾大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授。