12 佐藤可士和 (アートディレクター)

佐藤可士和

コンテンポラリーアートの面白さ。

 ひとことでアートと言っても一括りにはできなくて、僕が好きなのはコンテンポラリーアートです。その面白さは「ロールプレイングゲーム」みたいなものでしょうか。ロールプレイングゲームは、ある「大きな物語」を辿ってこそ楽しめるゲームですが、コンテンポラリーアートも作品単体の魅力だけではなく、背後にある時代や歴史も含め、たくさんの作家が積み重ねてきた「コンテンポラリーアートのコントラスト」をある程度分かってこそ楽しめるものだと思います。

 「現代美術」という大きな文脈の流れの中で、それぞれの作家がまた新しい文脈を提示する。たとえば、アンディ・ウォーホルや彼の作品がなぜ生まれたのかを知っていると、ジェフ・クーンズやダミアン・ハースト、村上隆の作品もより深く楽しめる。コンテンポラリーアートに関心を持つということは、そこに存在するルールを知り、自らもそこに参加しているような面白さがあります。

舞台となるマーケットを広げる。

ガンダムフロント東京の機動戦士ガンダム

ガンダムフロント東京の機動戦士ガンダム
2009年、お台場の潮風公園に登場し、大きな反響を生んだ実物大ガンダムの立像。現在は「ダイバーシティ東京 プラザ」にて見ることができる。(2012年10月3日現在)

 コンテンポラリーアートというロールプレイングゲームの舞台は、ニューヨークです。アートに強い都市は他にもありますが、コンテンポラリーアートに限って言えば、中心は明らかにニューヨークですね。もし六本木がその舞台の中心になりたいと思っても、難しいでしょうね......。それはエリアの問題だけではないんです。ギャラリーがいくらあっても成り立たないし、作家がいるだけでもキュレターがいるだけでも解決にはならない。それらすべてに加え、コレクターがいないとダメですよね。

 ニューヨークにはコンテンポラリーアートがビジネスとして回る仕組みやマーケットがはっきりある。日本にマーケットがないとはもちろん言いませんが、小さいですよね。その意味でも、先ほど言った「インパクトで関心を集める」ということが大切になってきます。関心が集まらないとマーケットも広がりようがないのです。

 ビジネスの軸でだけ語る気はありませんが、やっぱり人も物もお金も集まらないとクオリティも上がらず面白くならないのです。たとえば〈国立新美術館〉の上に座っている巨大なアートが実現したとして、それを見た企業や人がスポンサーになると手をあげて、また新たな試みが六本木で始まる、というような連鎖反応が起きたらいいですよね。

企画よりも純粋な「掴み」が出発点。

 先ほど「バカデカイくらい巨大なもの」と言いましたが、関心を持ってもらうためのインパクトって、そういった身も蓋もないようなものから僕は探していきますね。大きなものだけじゃなくて、極端に小さなもの、ものすごい派手だったり、ものすごい整然としていたり。難しいことをいろいろと理解しなくてもパっと目に入ってくるくらいシンプルなものでないと強いコミュニケーションは生まれない。いわば「掴み」ですよね。その掴みができればベースの80点くらい採れて、あとは細心の注意を払ってディティールを完成させていく。そのバランスが大切だと思っています。

 それは「企画が面白い」というのとも違います。企画以前のコンセプトが最も重要。コンセプトとは、何をするのかという大きな目的であり、狙いであり、そのプロジェクトにおけるキーワードでもある。ですから最初の「純粋な掴み」がコンセプトそのものになっていることもあります。