11 猪子寿之 (チームラボ代表)

猪子寿之

好きな都市に共通する、寛容さと自由さ。

 秋葉原は僕が住んでいる街でもあるし、もちろん一番好きな都市のひとつだけど、他に言うなら、バンコクも好き。バンコクって、行ったらみんな好きになっちゃうと思うよ。それってさっきの秋葉原の話しにも似ているんだけど、極めて寛容。寛容で自由。そして、文化が豊かなんです。普通のしょうもない店に入っても、グラフィックのレベルとか高いし、おしゃれなんだよね。

 日本とタイってアジアの中で欧米の植民地になっていない唯一の国なんです。日本は敗戦があったけど、タイには敗戦もなかった。だからタイは、欧米的な思想や価値概念の影響が最も少ない国なのかもしれない。アジアがアジアとして、欧米とは違う価値観で成長してきた良さみたいなものが一番残っていると思う。バンコクにいると、アジアって、本当はもっとアジア中素敵だったんだな、って思うんです。

微笑みの国は合理的?

ウィスット・ポン二ミット (c) 『ブランコ』ウィスット・ポンニミット/小学館 IKKI

ウィスット・ポン二ミット
タイの漫画家。日本でも「タムくん」の愛称で親しまれ、多くのファンを持つ。2009年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門の奨励賞を受賞。代表作は「ブランコ」(IKKI連載)等。

 日本は明治維新以降、主流に評価されるものが欧米っぽくなっちゃんたんだけど、初音ミクに象徴されるような、大衆に好かれるものの文化や流れって実は脈々とあって、そういう意味でのオリジナリティとかクリエイションのレベルが、タイは超高い。マンガ家のウィスット・ポンニミットとか。名前は知らなくても、たぶん見たことあると思いますよ。

 あと、ちょっと面白いなと思ったのは、タイでは怒ることは恥ずかしいことなんだって。愚なの。愚の骨頂。僕は、怒るっていうのはコミュニケーションの手段のひとつとして必要だと思っていたんだけど、でもタイの人って怒らないんだよね。その代わりどうするかっていうと、パっといなくなる。

 確かに、本気で怒っちゃったら、もう人間関係壊れるじゃん。1時間怒って、その後どうせ人間関係なくなるんだったら怒った1時間って無駄じゃん。それってすっげー合理的。タイは微笑みの国って言われるけど、その理由は怒る前にいなくなっちゃうから、結果、いつも笑っているように見える(笑)。

踊るなってどういうことですか?

 そうだ、六本木にがんばってほしいことがあった。風営法のダンス規制に対してもっと戦ってほしい。今クラブに行くと、トイレに「当店では一切踊りを禁止しています」とか書いてあって、変なんですよ。大昔にできた風営法に「客にダンスをさせ、飲食をさせる営業」への規制が含まれているみたいなんですけど、それをこの時代に施行し、踊るなって言う。脚を上げたら捕まえるっていうモチベーションは何なんですかね? 人が人に対して踊るなっていうのって、相当変ですよね。

 六本木が集積してきたことって、デザインとかアートの前に、クラブとかライブハウスの文化でしょう。それを否定されてもいいってことに、なぜなれるのか。それにはとても興味があります。

取材を終えて......
豪快に笑いながら登場し、撮影終了後にも豪快に笑いながら去っていった猪子さん。それでもインタビュー時には、時に長い沈黙(5分くらい!)があったりと、今までで一番スリリングな取材でした。秋葉原を愛する猪子さんの熱が伝わってくるインタビューだったのではないでしょうか?(edit_rhino)

猪子寿之(いのこ・としゆき)
ウルトラテクノロジスト集団チームラボ代表。1977年、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。大学では確率・統計モデルを、大学院では自然言語処理とアートを研究。 チー ムラボは、 プログラマ・エンジニア(プログラマ、UIエンジニア、DBエンジニア、UIアー キテクト、ネットワークエンジニア、ロボットエンジニア、画像 処理エンジニア)、数学者、建築家、Webデザイナー、グラフィックデ ザイナー、CGアニメーター、絵師、編集者など、情報化社会のさまざまなものづくりのスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。
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