03 柴田文江 (インダストリアルデザイナー)

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東京は、世界で一番好きな街。

 東京はいろんなものがぐちゃぐちゃでカオスなんだけど、世界で一番好きな街も、やっぱり東京なんです。

 出身は山梨県で、山中湖と河口湖の真ん中あたり。で、最初の東京体験は小学校3年生の時でした。友達と2人で原宿に買い物に来たんです。当時の私には大冒険ですよね。あの頃は日本全国どこででも同じものが買えるような時代ではなかったので、たとえば「レッグウォーマーというものが流行ってるらしい」となると、もう東京に買いに行くしかないし、買って帰るとヒーローですよ。わあ、すごい、そんなの持ってるんだ!って。ちょっとしたファッションリーダーです、小学校の。

 大人になってからの東京は、もう夢の街ではないけれど、なぜ好きかと言うと、やっぱり自由だなと思うんですよね。海外だと食事に行く店にしても遊びに行く場所にしても、キッパリとセグメントされているけれど、東京は子どもなら子どもなりに、大人なら大人なりに、いろんなものを自由に選択できる。

サメのように、流れの早い中心で泳ぐ。

 事務所の場所として六本木を選んだのは、東京の真ん中だから。今や真ん中だけが働く場所じゃないけれど、私としては真ん中にいたほうが、いろんなものが流れてくるので、いられるうちは、いようと思っています。

 海流の速いところにはサメがいるらしいんですけど、サメがなぜそこにいるかというと、流れが早いと休んでいるときもエラ呼吸ができるから。自分で動くことも大事ですが、サメの気持ちも分かる。

 デザイナーとして今一番関心があるのは、日本の理科系の技術のすごさというか、いま化学メーカーと仕事をしていて、簡単に言うと「物質感のないようなものをつくる新しい技術」があるんですね。それは、ものの在り方を大きく変えられそうな技術なんです。日本のテクノロジーがとても高い水準にあるということに改めて触れ、わくわくしているんですよね。

ジャンプアップする物づくりの可能性。

 その新しい、魔法のような技術にデザインが介在することで、私たちの暮らしにどう役立てることができるのか。

 新しい発見って、全く違う価値観の人たちが同じ方向を向くことで生まれるのだと聞いたことがあります。私にとっては、いままで会うこともなかったような研究者たちと話すこと自体がとても楽しいし、ときどき六本木の事務所で打ち合わせをすることもあるんですけど、研究者の方々にとっては、こちらの世界が珍しい、みたいな感じで(笑)。けれど彼らは本当にクリエイティブで、デザインリテラシーの高さには驚かされます。日本には伝統工芸のような物づくりの素晴らしさもあるけれど、それとは別に、理科系の物づくりで、もうひとつ先までジャンプアップする可能性、まだまだあると思っています。

取材を終えて......
わかりやすい例えや言葉の数々で、思わず「なるほど~」と何度もうなずいてしましました。インタビュー後、東京ミッドタウンからかなり近い場所に事務所があるだけに、六本木に詳しい柴田さんからオススメのランチスポットなど、ローカル情報を教えていただきました。編集部ブログでご紹介させていただきます。(edit_rhino)

柴田文江(しばた・ふみえ)
1990年 武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業後、東芝デザインセンターを経て 、94年Design Studio S設立。家電製品から日用雑貨、医療機器までインダストリアルデザインの分野で幅広いジャンルのデザインを手掛ける。主な仕事に無印良品「体にフィットするソファ」/オムロン「けんおんくん」/JR東日本ウォータービジネス「次世代自販機」ドイツIFデザイン賞金賞、毎日デザイン賞など国内外で受賞歴多数。