02 葛西 薫 (アートディレクター)×廣村正彰 (グラフィックデザイナー)

葛西薫×廣村正彰

どちらも広告やグラフィックデザインの世界の第一線で活躍するクリエイター。尊敬する先輩なので、と挨拶もきっちりの廣村正彰さんと、それにも増して、恐縮の様子の葛西薫さん。でも対談が始まってみれば、踊る話しから日本の未来像まで、話しは多岐に広がります。ふたりは六本木デザイナーズフラッグ・コンテストの審査員でもありますので、六本木商店街振興組合の親睦会でも顔を合わせる仲。ゆかりの深い、六本木の未来を考えるにあたり、語るのはまず、六本木との歴史から。

update_2012.6.6 / photo_taro hirano / text_tami okano / edit_rhino

ふたりの若き六本木。

アクシス

「デザインのアクシス(機軸)の一翼を担う」というコンセプトで外苑東通り沿いに誕生。ギャラリーはもちろん、インテリア用品やデザイン書籍を扱う店舗がある。写真が対談に登場した、倉俣史朗さんがデザインした階段。

葛西僕は北海道から東京に出てきて、それだけでもう気後れしているんだけれども、中でも六本木は都会中の都会というか、いちばん遠くにある街でしたね。二十歳ぐらいのときのこと。瀬里奈ビルの横に「ラストトゥエンティーセント」という名前の踊る店があったんですよ。思い出といえば、そこで朝まで踊ったことがありますよ。

廣村葛西さんが朝まで踊るなんて、今では想像もつかない!

葛西意外と好きだったかも......

廣村そうですか! でも葛西さん、スポーツマンですからね。バドミントンですよね。俊敏な動きでシャカシャカシャカっと。

葛西フットワークとかリズムに乗るとか、とりわけ何か刻む感じというのが好きですから、共通するかもね。まあ、六本木というのはそういう思い出くらいで、当時は正直、居心地が悪かった。六本木が悪いんじゃなくて、僕がダメだったという感じです。

廣村僕は愛知県の安城から出てきて、学校が小平市だったから、どちらかというと新宿を中心に東京の西側のほうが拠点というか得意でした。そして僕も六本木というと、最初のころはディスコです。

葛西廣村さんも踊ってたんだ。

廣村結構行った......かも。でも、僕の六本木との接点は「AXIS」ができたことが大きかった。75年ぐらいですかね? 繁華街の通りは外国人も多くて恐かったけど「AXIS」のイベントには当然行かなくちゃ、と、駅から六本木の街を歩いて行きましたよ。「デザイン」をテーマに1つのビルを作るという考え方がすごいなと思って。真ん中の階段が倉俣史朗さんのデザインで、上ったり下りたりした記憶もある。あとは六本木に「ピラミデ」というビルがあって、竹尾のペーパーショーもそこでやっていた。それと「WAVE」。

葛西「シネヴィヴァン」もあったね。あそこに行くと少し頭がよくなったような錯覚をしたりして。タルコフスキーの映画とかソクーロフとか見たけど、何が何だかわからない。何だか格好いいんだけど、無理して見ている感じ。

廣村でも、無理して六本木でそういう文化に接することが嬉しかった。

葛西そうそう。

風景を変える。デザインとアートをもっと楽しむ。

葛西それで、時代は今に戻って、六本木をデザインやアートとどう関係させるかという話しだけど、僕ね、六本木の看板という看板の広告を、誰か1人のアーチストだけに限るとか、1人のデザイナーだけに限るとか、色だけにしてみるとか、そういうことができないかと、ふと思ったんです。そうすると、街の風景が一瞬で変わりますよね。

廣村日本は特に看板が多いですからね。

葛西以前仕事で、自分のつくっているグラフィックが街の看板に入ったらどう見えるかということをシミュレーションしたことがあるんですね。そのときに、いろんな看板が見えているのを、全部同じものにしてみたら、見慣れた街がまったく別世界に見えたんですよ。時々その時のことを思い出しては、風景が変わるってどういうことなのかを考えます。

 江戸時代の街並みを想像すると、黒と赤の筆字と和紙の色と木の色ぐらいしか多分なくて、それしか材料がないものだから、建物も含めて結果的にひとつになっていきますよね。それを今の六本木を置き換えるのは現実としては無理だけれど、風景としては魅力的でしょうね。暗くて、提灯だけがだーっと並んでいるのも、なかなかいいじゃないですか。

廣村いいですね。僕がちょっと思っているのは、デザインやアートは「生活を楽しむ」という土台があって初めて活きるような気がするんですね。それを知ったのは東京ミッドタウンや六本木ヒルズを中心にして行われた「六本木アートナイト」で、初回の企画に関わらせてもらったのですが、とにかく単純に、面白かったんですよ。春で桜も咲いているし、一晩だけでもみんなで騒ごう、みたいなことで、考えてみたら、デザインもアートは、しかめっ面して語るものじゃなくて、楽しむものですよね。

 だから僕の案は、「六本木アートナイト」をもっと広げて、その期間だけはお店の一角をギャラリーにするとか、あるいはもっと長く、年間を通してアートのお菓子を作って売っちゃうとか、みんなが自分なりにデザインやアートを解釈し、この街が持っている潜在能力をもっと引き出して行くことかな。