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2018年03月16日

【展覧会レポート】「MAMコレクション006:物質と境界―ハンディウィルマン・サプトラ+千葉正也」、「MAMスクリーン007:山本 篤」

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千葉正也 「2013年のパワフルヤングボーイ」 2013年
画像提供:シュウゴアーツ東京

現在、森美術館では「MAMコレクション006:物質と境界―ハンディウィルマン・サプトラ+千葉正也」、「MAMスクリーン007:山本 篤」が開催されています。MAMコレクションとは、日本を含むアジアの現代美術に焦点をあてた森美術館のコレクションを、多様なテーマに沿って順次紹介するシリーズ。そしてMAMスクリーンとは、半世紀にわたってビデオ・アートが発展してきた中、世界各地のシングル・チャンネル映像作品を上映するプログラムのことです。

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ハンディウィルマン・サプトラ 「根もなく、つぼみもないNo.12」2011年
画像提供:森美術館、東京

まずは、「MAMコレクション006」の作品をご紹介。こちらはハンディウィルマン・サプトラさんの「根もなく、つぼみもないNo.12」。まるで膨れたお餅か、変わった形のニンニク、はたまた赤い紐で縛られたビニール袋にも見える本作ですが、サプトラさんは作品の感じ方を観客一人一人の解釈に委ねています。

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千葉正也さんの「2013年のパワフルヤングボーイ」は、高さが274cmと、成人男性の身長を大幅に超えるほどの大きな作品です。岩手県遠野市に実在する「さすらい地蔵」をモチーフの一部としており、2000年に千葉さんが遠野を訪れた際に関心を抱いたことがきっかけで、本作が作られました。

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展示風景:「MAMコレクション006:物質と境界―
ハンディウィルマン・サプトラ+千葉正也」森美術館、2017年
撮影:長谷川健太 画像提供:森美術館、東京

千葉さんは2013年、作品を制作するために再度遠野を訪れており、その時のドローイングも作品とともに展示されています。そこには、過去に撮影した「さすらい地蔵」の写真や、浮かんだアイデア、さらに「(アイデアを実現させたいが)金が無くてできない!もちろんがんばればどうにかなる」など、当時の心境が走り書きされています。

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千葉正也 「ポーク・パーク#4」 2016年
画像提供:シュウゴアーツ東京

「ポーク・パーク#4」は、日用品や彫刻が入り混じった、まるで想像の世界を描いたような作品ですが、これらはすべて実際に千葉さんのスタジオに作られた立体作品を絵にしたもの。作品をよく見ると実は迷路になっており、「ゴリラに生まれ変わって、他のゴリラと森の中でおもい切り戦ってみたい→象(原文ママ)」など、遊び心たっぷりの言葉が散りばめられています。

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作品の見どころについて聞かれた千葉さんは「全部ですかね(笑)」と冗談を交えつつ「見る人に変化が起きてほしいな」と作品に込めた思いを明かしていました。

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山本 篤 「過去と未来は、現在の中に」 2016年
画像提供:森美術館、東京

「MAMスクリーン007」の「過去と未来は、現在の中に」は、これまでドキュメンタリー作品からフィクション、実験的なコントのような作品まで、174本にのぼる映像作品を制作してきた山本さんによる作品。オリジナルは46分ありますが、本展で上映されているのは、今回のために山本さんが再編集したバージョンとなります。

本作は、妻の妊娠中に山本さん自身が昔の恋人を訪ねることで、「過去、現在、未来」と向き合うという極私的なドキュメンタリー。このように、現在の自分と向き合い、映像に自身が出演することに関して山本さんは、「カメラに対する緊張感というのは、あまりありませんね。そこに写っているのは自分であって自分じゃない、他者のような存在として見ています」とコメント。

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さらに、これまでの作品をダイジェスト的に再編集した作品を出品していることについて触れ、「自分がやってきたことを俯瞰で見る機会になりました。少しでもいいので、作品に共感してもらえるところがあれば嬉しいですね」と語りました。

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また本展覧会の開催に伴い、トークセッション「アーティストとアーティストについて語る」が行われ、千葉さんと山本さんの対談を聞くことができました。これまでも同じ展覧会に出展するなど、普段から交流があるお二人。まずは、山本さんの映像作品が上映されました。

展覧会では上映しきれなかった作品を含む映像を観終えた千葉さんは、「作品の中に、どこか腑に落ちる瞬間があるんですよね」と納得したようにつぶやき、「今回出品している作品は、展示の都合上短くカットされている部分があるんですけれども、こうやって丸々一本見ると、(上映バージョンでは)無駄な部分に見えるところが、篤君(山本さん)が元々描こうとしていた"時間"であることが分かりますよね。見終わった時に"なんかいいもん見れたな"と思えるんです」と満足そうな笑顔を見せました。

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「千葉君は、二つのギアみたいなものをすごく上手に使っている作家ですよね」と話す山本さん。千葉さんの作品のスタイルを「アーティストとしては誠実なスタイルを持っていて、そこにあるものを写実的に描写するんだけど、描いているものは流動的で、偶然生まれたフォルムみたいのがあるんですよね」と語り、これまでの千葉さんの作品の流れを自身の分析も交えて紹介しました。

トーク終盤には作品作りに欠かせない"想像力"をテーマに議論が白熱しました。山本さんの「年齢によって、想像力や発想力は減退するか?」という問いに対し、千葉さんは「想像力は筋力のようなものとは違う気がするので、それは違うんじゃないですかね」と回答。そこから関連して小林秀雄やユングの話が飛び出すなど、トークイベントは内容の濃い時間となりました。

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展示風景:「MAMコレクション006:物質と境界―
ハンディウィルマン・サプトラ+千葉正也」 森美術館、2017年
撮影:長谷川健太 画像提供:森美術館、東京

「MAMコレクション006」では、作品そのものの素材や質、そして作品と空間との境界を見ることにより、これまで見過ごしてきてしまっていた物質との距離感を、「MAMスクリーン007」では、目の前の現実と向き合おうとすることの大切さを、改めて知ることができました。



編集部 髙橋





information
MAMコレクション006:物質と境界―ハンディウィルマン・サプトラ+千葉正也
MAMスクリーン007:山本 篤
会場:森美術館
会期:2017年11月18日(土)~2018年4月1日(日)
開館時間:10:00~22:00(最終入館 21:30)※火曜日のみ17:00まで
観覧料:一般1,800円、高校・大学生1,200円、子ども600円、シニア(65歳以上)1,500円(※本展のチケットで、「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」、「MAMコレクション006」、「MAMスクリーン007」、「MAMプロジェクト024:デイン・ミッチェル」および展望台 東京シティビューにも入館可)
公式サイト(URLをクリックすると外部サイトへ移動します):
https://www.mori.art.museum/jp/

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